大切なお住まいに、新たな空間を増やしたい。
家族が増えたり、趣味の部屋を作りたかったり、理由は様々でしょう。
増築は、暮らしを豊かにする素敵な選択肢です。
しかし、増築が完了したら忘れてはいけない大切な手続きがあります。
それが「増築登記」です。
特に、建物の面積が変わる増築の場合、この登記は避けて通れません。
でも、「登記って難しそう」「具体的に何をすればいいの?」と不安に感じる方も多いのではないでしょうか。
この増築登記の基本手続き面積変更時に知っておくべきことについて、分かりやすく丁寧にご説明します。
この記事を読めば、増築登記の流れや必要なこと、そして知っておくべきポイントがきっと見えてくるはずです。
安心して増築後の手続きを進めるために、ぜひ最後までお読みください。
増築登記はなぜ必要?面積変更がもたらす影響
増築登記とは、建物が増築によって構造や床面積に変更が生じた際に、その変更内容を登記簿に反映させる手続きのことです。
不動産登記法では、増築や改築などで建物の物理的な状況に変更があった場合、その変更が生じた日から1ヶ月以内に登記を申請することが義務付けられています。
この義務を怠ると、10万円以下の過料に処される可能性があると定められています。
もちろん、実際に過料が課されるケースはそこまで多くないという話も聞きますが、法律で定められた義務であることに変わりはありません。
増築登記が必要なのは、単に法律で決まっているからという理由だけではありません。
登記簿は、その建物の正確な情報を公に示すためのものです。
増築によって面積や構造が変われば、登記簿の情報は現状と一致しなくなります。
この登記簿と現況の不一致は、様々な場面で思わぬトラブルを引き起こす原因となります。
増築登記をしないとどんなリスクがあるのか
増築登記を怠ると、後々大きなリスクに直面する可能性があります。
最も代表的なリスクの一つは、建物を売却しようとした際に、登記簿上の情報と実際の建物の状態が異なるため、売買契約がスムーズに進まなくなることです。
買主は、登記簿を見て建物の情報を確認しますが、増築部分が登記されていないと、買主は建物の正確な面積や構造を把握できません。
これにより、買主は不安を感じ、購入をためらったり、最悪の場合は契約が白紙になったりする可能性もゼロではありません。
私の知人のケースでは、築年数の古い家を売却しようとした際に、過去の増築部分が未登記であることが発覚し、慌てて登記手続きを行うことになりました。
売買契約の期日が迫る中での手続きは非常にストレスがかかり、通常よりも余計な費用も発生してしまったそうです。
また、住宅ローンを借り換えたり、新たに不動産を担保にした融資を受けようとしたりする場合にも、登記簿の不整合が問題となることがあります。
金融機関は、融資の審査において登記簿を確認し、担保となる不動産の価値を評価します。
登記されていない増築部分があると、金融機関は建物の正確な価値を判断できず、融資の審査が厳しくなったり、希望額の融資が受けられなくなったりする可能性があります。
さらに、火災保険や地震保険といった損害保険に関しても、増築部分が登記されていないと、保険の対象に含まれない、あるいは保険金が適切に支払われないといった問題が生じることも考えられます。
このように、増築登記をしないことは、将来的な不動産の取引や金融取引、さらには万が一の事態に備える上でも、様々な不利益をもたらす可能性があるのです。
面積変更が登記簿にどう反映されるのか
増築によって建物の床面積が変更された場合、その内容は不動産登記簿の「表題部」という箇所に記録されます。
具体的には、「床面積」の欄に、増築後の正確な床面積が記載されます。
例えば、もともと1階50㎡、2階50㎡で合計100㎡だった建物に、1階部分を20㎡増築した場合、登記簿の床面積の記載は「1階 70㎡、2階 50㎡」のように変更され、合計床面積が120㎡になったことが明確に示されます。
増築が2階部分であれば、2階の床面積が変更されますし、平屋の増築であれば1階の床面積が変更されます。
登記簿には各階ごとの床面積が記載されるため、増築によってどの階の面積が増えたのかが分かるようになっています。
また、物置や車庫といった附属建物を増築した場合も、登記簿にはその附属建物の種類、構造、床面積が追加で記録されます。
本宅の登記簿に附属建物の情報が追記される形になります。
登記簿に正確な床面積が記録されることは、固定資産税の算定においても重要です。
固定資産税は、固定資産評価額に基づいて計算されますが、建物の評価額は床面積が重要な要素の一つとなります。
増築して面積が増えれば、当然、固定資産税の評価額も増え、税額も変わります。
登記簿に正確な面積が記録されることで、適正な固定資産税が課されることになります。
登記簿に面積変更が反映されることで、建物の物理的な状況が公的に証明され、第三者に対してもその正確な情報を開示できるようになるのです。
これは、不動産の透明性を高め、取引の安全性を確保するために非常に重要なことと言えます。
増築登記の基本手続きの流れと必要書類
増築登記の手続きは、いくつかのステップを経て行われます。
大まかな流れを把握しておけば、実際に手続きを進める際の不安を軽減できます。
まず、増築工事が完了し、建物が使用できる状態になったら登記手続きを開始します。
登記の申請先は、建物の所在地を管轄する法務局です。
申請方法は、法務局の窓口に直接提出する方法、郵送で提出する方法、そしてオンラインで申請する方法があります。
オンライン申請は専門家が主に利用しますが、個人でも行うことは可能です。
手続きを進める上で重要となるのが、必要書類の準備と、建物の正確な情報を記載した「建物図面」および「各階平面図」の作成です。
これらの図面は、建物の形状、構造、床面積、敷地内の配置などを正確に示さなければならず、専門的な知識と技術が必要です。
自分で作成することも不可能ではありませんが、正確性が求められるため、多くの場合は専門家である土地家屋調査士に依頼することになります。
必要書類をすべて揃え、申請書と図面を作成したら、法務局に提出して登記を申請します。
法務局での審査を経て、問題がなければ登記が完了し、登記簿に増築内容が反映されます。
登記が完了すると、登記完了証が交付されます。
登記手続きを始める前に知っておくべきこと
増築登記の手続きを始める前に、いくつか知っておくとスムーズに進められるポイントがあります。
まず、増築工事が完了したことを証明する書類として、「工事完了引渡証明書」や「確認済証」「検査済証」などが必要になる場合が多いです。
特に、建築確認申請が必要な規模の増築を行った場合は、完了検査を受け、建築主事に発行される検査済証が重要な書類となります。
これらの書類は、増築が適法に行われたことを示す証拠となるため、建築業者から確実に受け取るようにしましょう。
次に、登記手続きの専門家についてです。
建物の物理的な状況に関する登記(表示に関する登記)は、土地家屋調査士の専門分野です。
一方、所有権の移転や抵当権の設定など、権利に関する登記は司法書士の専門分野となります。
増築登記は表示に関する登記ですので、専門家に依頼する場合は土地家屋調査士に相談することになります。
自分で手続きを進めることも可能ですが、建物図面や各階平面図の作成は非常に専門的で、正確な測量や計算が求められます。
図面に不備があると、法務局から補正を求められ、手続きに時間がかかったり、何度も法務局に足を運んだりする必要が出てきます。
そのため、多くの方は土地家屋調査士に依頼しています。
依頼する土地家屋調査士を選ぶ際は、複数の事務所から見積もりを取り、費用や対応などを比較検討することをおすすめします。
また、事前に法務局の窓口に相談に行くと、手続きの流れや必要書類についてアドバイスをもらうことができます。
相談する際は、増築の内容が分かる資料(設計図など)を持っていくと良いでしょう。
これらの事前準備をしておくことで、登記手続きを円滑に進めることができます。
専門家(土地家屋調査士)に依頼するメリットと費用
増築登記の手続きを土地家屋調査士に依頼することには、多くのメリットがあります。
最大のメリットは、正確な建物図面や各階平面図の作成を任せられることです。
これらの図面は、建物の寸法や形状、敷地との位置関係などを厳密に測量し、正確な縮尺で作成する必要があります。
専門知識と測量機器を持たない個人が正確な図面を作成するのは非常に困難です。
土地家屋調査士に依頼すれば、専門家が現地調査を行い、正確な測量に基づいて図面を作成してくれるため、法務局での審査をスムーズに通過できます。
また、登記申請書の作成や必要書類の収集代行も依頼できるため、自分で手続きを行う手間や時間を大幅に削減できます。
特に、普段仕事などで忙しい方にとっては、専門家に任せることで精神的な負担も軽減されるでしょう。
さらに、法務局からの補正指示があった場合でも、専門家が適切に対応してくれるため安心です。
自分で手続きを進めて不備があった場合、法務局とのやり取りに慣れていないと、どのように対応すれば良いか分からず困ってしまうこともあります。
土地家屋調査士は登記に関する豊富な知識と経験を持っているため、様々なケースに適切に対応できます。
一方、専門家に依頼する際には費用が発生します。
土地家屋調査士の報酬は、増築の規模や形状、敷地の状況、依頼する事務所などによって異なりますが、一般的には10万円から20万円程度が目安となることが多いようです。
例えば、一般的な住宅の増築(サンルームや部屋の拡張など、比較的シンプルな形状で面積が大きくない場合)であれば、これくらいの範囲に収まることが多いでしょう。
費用には、現地調査費用、図面作成費用、申請書作成費用、法務局への交通費などが含まれます。
依頼する前に必ず見積もりを取り、費用の内訳を確認することが重要です。
費用はかかりますが、手続きの正確性、迅速性、そして精神的な安心感を得られることを考慮すると、専門家に依頼するメリットは大きいと言えます。
増築登記で後悔しないための注意点と知っておくべきこと
増築登記は、増築後の建物の状況を公的に証明するための重要な手続きです。
この手続きを円滑に進め、後々後悔しないためには、いくつかの注意点や事前に知っておくべきことがあります。
まず、登記の申請期限は、増築工事が完了し、建物として使用できる状態になってから1ヶ月以内と法律で定められています。
この期限を守らなかった場合、過料の対象となる可能性があることは先述の通りです。
工事が完了したら、速やかに登記手続きの準備に取り掛かることが重要です。
ついつい後回しにしてしまいがちですが、早めに準備を始めることで、慌てることなく手続きを進められます。
次に、登記に必要な建物図面や各階平面図の作成についてです。
これらの図面は、建物の正確な形状や寸法、敷地内の配置などを正確に記載する必要があり、専門的な知識と測量技術が求められます。
自分で作成することも不可能ではありませんが、法務局の定める様式や作成基準に従って正確に作成する必要があるため、専門家である土地家屋調査士に依頼するのが一般的で確実な方法です。
自分で作成する場合、正確な測量機器が必要になったり、法務局の担当者と何度もやり取りして修正したりする必要が出てくる可能性が高いです。
時間と労力を考慮すると、専門家への依頼を検討することをおすすめします。
また、増築部分が建築基準法に適合しているかどうかも重要なポイントです。
建築確認申請が必要な規模の増築を行った場合は、必ず完了検査を受け、検査済証を取得しておきましょう。
適法な増築であることが、登記の前提となります。
登記のタイミングはいつが適切か
増築登記の申請タイミングは、法律上は「増築工事が完了し、建物として使用できる状態になった日から1ヶ月以内」と定められています。
では、具体的にどの時点を「建物として使用できる状態になった日」と考えるのが適切でしょうか。
これは、増築の規模や内容によっても異なりますが、一般的には、増築部分の工事がすべて完了し、内装工事なども含めて人が住める、あるいは本来の目的通りに利用できる状態になった時点と考えられます。
建築確認申請が必要な増築の場合は、工事完了後に完了検査を受け、検査済証が交付された時点が一つの目安となります。
検査済証は、建築基準法に適合した建物であることを証明する書類であり、登記手続きの際にも提出を求められることがあります。
増築工事が完了したら、建築業者から工事完了の報告を受け、引き渡しを受けた後に、速やかに登記手続きの準備を開始するのが理想的な流れです。
ここで重要なのは、工事が完全に終わる前に登記の準備を始めてしまうと、工事の途中で設計変更があった場合などに図面を修正する必要が出てくる可能性があるため、工事完了を待ってから手続きに取り掛かるのが賢明です。
ただし、完了から1ヶ月以内という期限があるため、工事完了が近づいてきたら、事前に必要書類を確認したり、専門家への依頼を検討したりするなど、準備を始めることをおすすめします。
特に、年末年始や大型連休などを挟む場合は、法務局や専門家事務所の休業期間も考慮して、早めにスケジュールを立てることが大切です。
増築登記は、建物の現状を正確に反映させるための手続きであり、遅れてしまうと様々な不利益が生じる可能性があるため、期日内に確実に申請することが何よりも重要です。
自分で手続きを進める場合のポイント
増築登記の手続きを、専門家(土地家屋調査士)に依頼せず、自分自身で行うことも可能です。
費用を抑えたい場合などに、この選択肢を検討する方もいらっしゃるでしょう。
自分で手続きを進める場合、いくつかの重要なポイントを押さえておく必要があります。
まず、最も専門的で難しいとされるのが、「建物図面」と「各階平面図」の作成です。
これらの図面は、法務局が定める厳密な基準に従って作成しなければなりません。
具体的には、縮尺(建物図面は原則として500分の1、各階平面図は原則として250分の1)、方位、求積方法(床面積の計算方法)、敷地との位置関係の記載など、多くのルールがあります。
建物の正確な寸法を測量するための機器(レーザー距離計など)が必要になる場合もありますし、ミリ単位の精度が求められることもあります。
自分で作成する際は、事前に法務局のホームページなどで公開されている作成例や手引きを熟読し、不明な点は法務局の窓口に相談に行くことを強くお勧めします。
法務局の職員は登記の専門家ですが、書類作成の代行はしてく